告知
不安な日々を過ごし、ついに検査結果を聞く日がやってきた。夫も同行することに。
主治医の先生は女医さんで、年齢は30代半ばくらいのはっきりものを言う明るいタイ
プの人。そんな先生が、扉を開けると神妙な面持ちで座っていた。そのとき、
「あぁ、これ良くない方かも」と直感で思った。挨拶して座る。先生が重い口を開く。
「残念な結果です、腫瘍は悪性...乳がんでした」
やっぱり。悪い方だった。以外にも冷静で、泣いたりもしなかった。頭が真っ白と言う
わけでもない。何でかな?乳がんと言われても、どこか痛いところがあるわけでもない
し、実感がない。だからまだ無感情なんだ。先生は、今までの自分の検診や検査につい
て、やれることはやってきたつもりだけれど、もしかしたらもっと早くに踏み込んだ検
査をした方が良かったのかもとも思うとか、申し訳なさそうに言ってくれた。
私は、怒りの感情は全くなかった。確かに、細胞診で一度良性と言われたことについて
や、エコーやマンモ、MRIまでしたこともあって、何でその時に見つからなかったのと
思ったりもしたけれど、先生の人柄と言うか、責め立てたりはできなかった。
先生が説明してくれてるとき、ふと横を見ると、普段は大きな夫の背中が丸く小さく見
えた。すごく落ち込んでる。私はそれが一番悲しかった。看護師さんが夫に、
「ご主人、大丈夫ですか?」って言うくらい。私は大丈夫って聞かれなかったけど。
ふと我にかえって、手術をすぐにして欲しいとか、乳がんになった知り合いに連絡を取
ろうとか、まず誰に知らせようとか現実的なことが頭をぐるぐる回った。
なってしまったものは仕方ない。これからのことを考えなきゃって、勝手に頭がそう思
ったのかな。いっぱい考えることが出てきたなぁと思いながら病院を後にした。
一年経った今でも、あの時の自分は不思議なくらい冷静だったと思います。
その冷静さがどこからくるものなのか、分からないけれど。